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7月

2024下半期スタートに思うこと

早いもので今年も7月、今月は「20年ぶりの新紙幣発行」という大事業まであと2日です。キャッシュレス時代に向かって、最後の新紙幣ではないかとの声もあります。紙の文化がどんどんデジタル化され、便利さと同時に失うものも多いのではないかと思ったりします。楽譜もタブレットの出現で、クラシックコンサートの本番でも、タブレットを使う奏者も珍しくなくなりました。確かに同じ演奏でも、たくさんの楽譜を持ち歩かなくてはならない仕事ではむしろ必要不可欠のアイテムだと思います。でもせいぜい楽譜数冊で済むコンサートの場合、メリットもありますが、もしも電源が落ちたら・・・と思うと、コンサートで使用するのにはリスクがゼロではなく、躊躇する部分があります。でも確かにこの画期的なテクノロジーの発達は恩恵も大きく、楽譜を資料としてファイリングしたり、使いこなせたらどんなにか便利だろうとも憧れます。昨今は小学校などでの勉強も、どんどんタブレットが導入されているようですが、実際に鉛筆で書いたり、消したり、紙の本をめくったりという「触感」のようなものがどんどん失われていくようで、このまま10年後、20年後の子供たちの学習環境はどうなっているのだろうという危惧があります。紙の文化は、楽譜も本もそうですが、ページをめくる時の音や紙の香りなど、触感だけではないたくさんの感覚を無意識に使っています。先述の紙幣でも、クシャクシャの紙幣と、綺麗な紙幣と、やりとりをしたときの気分は全く違います。ご祝儀やお月謝は新札で、お悔やみは新札は避ける等々、特に私たち日本人はそうしたささやかなところでも、使い分けをしてきました。100%電子マネーの時代が来たら一体どうなっていくのでしょうか。相手への気遣い、相手を慮ることも、どんどん失われていくように思うのは考えすぎでしょうか。人間の五感「視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚」どれも本能的に自分を守る感覚であるはずが、現代人の多くはこれが鈍っていると言われているのは、間違いなくデジタル化されつつある社会に、原因の一端があるのでしょう。目で見るものも、耳から入るものもデジタルとは無縁ではない現代において、AIが完璧な演奏をすれば感動するかというと決してそんなことはないと思いませんか?ストリートピアノがどうしてあんなに人気が出たのでしょう。完璧でなくともそこで生身の人間が楽器を演奏している、その姿を見たり音を聴いたりするということが、かけがえのないことなのだと、人間の心を動かすのは、やはり人間なのだと改めて思うところです。私たちが本来持っている感覚を意識的に研ぎ澄まし、テクノロジーの発達に飲み込まれることなく、それを上手に使いこなすという意識がこれから先の時代に大切なことだと強く思います。