17
9月

THE PARTY vol.12

チェロの渡邉辰紀さんとデュオシリーズとして始めた年に一度のTHE PARTYシリーズも

おかげさまで今年12回目の開催の運びとなります。シリーズとして続けるのはなかなか難しい世界ですが、

共演者の渡邉さんの御協力と、「毎回楽しみにしています」とおっしゃってくださるお客様に

支えていただき、育てていただいた会です。パーティーの名前の通り、美味しいお食事やお飲み物を

楽しんでいただきながら、演奏も楽しんでいただく、またお客様同士もお知り合いになられたりと

この会なりの楽しみ方とスタイルが確立してきたかなと思います。

またゲストの方々にもご出演いただくことにより、さらにプログラムの可能性が広がって

私自身、毎年プログラムを考えるのが楽しいひとときです。

プログラムを考えるのは楽しいですが、いくら半世紀近くピアノと共にあっても

練習は常に「富士山への道も一歩から」の心境、頂上を見てため息をつくところから始まります。

時に己の弱さに負けそうになるのは学生時代と変わりません。

練習が大好き、練習しないと気持ち悪い、練習しないと気がおかしくなる・・・という

神に選ばれし人々ではないか?という音楽家も珍しくない世界ですが、私はごくごく平凡な人間なので、

楽器の蓋を開けるまでの気の重さは、もしかしたら小学生の頃から変わらないかもしれません。

パールマンという世界的ヴァイオリニストがいます。彼が「練習へのアドヴァイス」(?)なるものを

こんなふうに言っています。

①スローテンポで弾く ②目的を明確に持った練習(何のための今の練習か)

③小さく区切ってくりかえす(例:2小節単位の部分練習をくりかえす)

④注意深く自分の音を聴く(聴こえているのではなく、「聴く」)

⑤我慢強くあきらめない

彼はこれらのことを、ごく当たり前のことですがと前置きしています。そして

「どんな時も、練習時間は足りないものです」とも言っています。あと1週間あったら、あと3日あったら・・・

試験前の勉強でも同じかもしれませんね。また漫然と8時間練習するより(むしろ悪い癖がつく場合がある)、

音をよく聞いて集中した2時間の方がはるかに価値があるとアドバイスは続きます。

この5つのアドバイスでは、特に⑤の「我慢強くあきらめない」というのは繰り返し言っています。

楽器の習得には時間のかかるものですが、子供さんのお稽古事で常に人気上位に楽器があるのは

さまざまな理由がありながら、この「粘り強い精神力を培えるから」というのは上位ではないでしょうか。

もちろん音楽を作り上げる達成感や幸福感があるから音楽を続けていかれるのですが、そのためにも

このパールマンの正しい練習のアドバイスは、本当に普遍的なものだと改めて思いました。

このアドバイスをもう一度噛み締めながら、私も日々の練習に臨みます。

今年はゲストに、昨年に引き続き大学の同期のヴァイオリニスト高橋香織さんを迎えます。

仲間と作る音楽は、至福の時です。ご多用と存じますが、よろしければぜひご来聴ください。