03
8月
暑中お見舞い申し上げます
長梅雨の今年、やっと東京も梅雨明けしました。スタジオの玄関には風鈴のピック。おもちゃのようですが、案外、音もいいんですよ。昼間は真夏日ですが、夕方に吹く風は涼しく風鈴を鳴らしてくれます。
コロナ禍の昨今、小学生のころ亡父に言われた言葉が改めてしみます。「お前は大人になった時、ピアノがものすごい心の支えになる日がくるぞ」何度となく言われた言葉です。その頃の私は、特にピアノが好きでもなく、通っていた音楽教室では天才児に囲まれた典型的な劣等生、その上とりわけ練習は大嫌いで、ピアノによって多少の自尊心が保たれていたものの、ピアノと一生付き合って行くことになるだろうなという漠然とした予感があるのみ。子どもだったこともあり、この父の言葉はピンときませんでした。当たり前のようにそばにあるピアノが心の支えであることは、当然だろうなという程度です。2020年、世界中をパニックに陥れたコロナ旋風ですが、そんな今、一人ピアノを弾く時間が、こんなにも自分を現実の世界から音楽の世界にいざなってくれて、そのことがこんなにも心の癒しや救いになるのかということ、自分自身を見失わないでいられる支えになるのかということに、改めて父の言葉を思い出します。音楽を演奏するということは、現実とは違う別の世界へ旅ができるということです。ピアノを習い始めより半世紀を超えた今、自分にピアノがなかったら・・・もはや考えられないほど、紛れもなく私の心の支えとなっています。それは幼い頃父が言っていた言葉の答えでもあるのかと、今、実感として思えるようになりました。スタジオにレッスンにいらっしゃる生徒さんお一人お一人が、ご自分の演奏によって、生涯にわたって音楽の世界に旅ができるといいな、そんな思いを新たにするこの頃です。
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