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5月

練習につまずいたら〜1

真夏日があるかと思えば、雨風の強い日、寒い日・・・と、天候の落ち着かない季節です。

西日本からはそろそろ梅雨入りの声ですね。

体調を壊しやすい時期、百日咳も流行っているそうで、皆さまどうぞご自愛ください。

5月は「五月病」にあるように、なんとなく仕事も勉強も憂鬱だったり停滞したり。

それも多少なりとも気候が関係してるかもしれませんね。

 さて今日は、ピアノの自宅練習についてです。

もちろん小さい頃から音高・音大を目指す生徒さんもいらっしゃいますが、

「専門家にするつもりはないので、楽譜が読めて、ピアノで好きな曲を楽しめるようになれば」というのが

当教室に限らず、ピアノのレッスンにお子様を通わせるほとんどの保護者の方のご希望かと思います。

地道な練習は大人でもうんざりすることもありますが、どうしてもこの「楽しめる」境地に行くまでには

地道な練習は避けて通れません。また、楽譜が読めるようになることも必須となります。

演奏力はあるのに、譜面を読むのが苦手だとなかなか自由に音楽を楽しむ所まで行きませんし、

逆に、譜面は読めるけど練習量が足りないと、指が自由に動きません。

今日はその練習2大柱「譜読み」と「弾くこと」の、「弾くこと」の方を少しお話ししたいと思います。

ピアノは文字を書く程度の運動量とは全く異なり、指先のアスリートと言ってもいいかもしれません。

もっと言えば全身アスリートです。椅子への座り方、重心の支え方、上半身の使い方、腕・指先の使い方、等々。

練習量が足りなければ、あっという間に、ピアノ演奏に必要な筋力も落ちていきます。これは自戒を込めてです。

ちょっと大袈裟なようですが、遊び弾きでもいいのでいつも鍵盤に触っているお子さんは、それなりに演奏に必要な

筋力がついていきます。まずは鍵盤と仲良くなることが大事です。それには発表会で弾いた曲・合格になった曲も、

いつでも弾けるレパートリーとして弾き続けることです。実はこれも大切なピアノの「練習」の一つなのです。

新しい曲を、音を拾ってなんとかつっかえながらも弾くというのはまだ「練習」とは言えず

あくまでも「譜読み」です。これは常々、演劇の台本と芝居の関係に似てると思っています。

台本をひと通りなんとか読めることと、それを芝居にして実際の舞台にかけることとは全く違いますよね。

ピアノも同じです。「譜読み(本読み)」が終わって、ひと通り良いテンポで弾けるようになったところからが、

初めて「練習(立ち稽古)」となります。発表会は文字通り「本番の舞台」です。

 演奏とは「音を間違えないで弾く」ことではありません。また譜面を見ながら

やっとなんとか弾けるようになったところが「ゴール」ではありません。暗譜(楽譜を見ないで弾く)をして、

完全にその曲を自分のものにして演奏するところからが「練習」の始まりです。繰り返しますが、

そこまでは「譜読み」の段階です。この譜読みの段階でレッスンを受けても、あまり進歩を期待できません。

その段階ではレッスンで、生徒さんが弾きにくいところの「部分練習」の方法を一緒に繰り返すことはできます。

でも次のレッスンでは、その「部分練習」をしっかりご自宅でクリアしていらっしゃらないと、

また同じ箇所の部分練習をレッスンですることになり、レッスン時間のほとんどを、

毎回同じ箇所の部分練習で終えることになります。

当然次の段階に進めず同じ曲を何ヶ月も弾き続けることになり、レッスン内容も停滞していきます。

たまたまそこでクリアできたとしても「譜読みがんばりましたね」と言って

合格にすることは、結局、その生徒さんの中に何も残っていかないので当教室ではいたしません。

それは生徒さん自身が「まだ思うように弾けてない」と一番よくわかっているからです。

繰り返しますが「譜読みのゴール」が「演奏のゴール」ではありません。レッスンであっても、むしろ

レッスンだからこそ、常に発表会のつもりで仕上げる。常に誰かに聴かせるつもりで仕上げる。

そうした意識がとても大切です。

 ご自宅での部分練習はそんなに時間のかかることではありません。一箇所せいぜい一曲の中で1〜2小節のこと。

短い箇所ですから1回ゆっくり弾いてもせいぜい15秒〜長くて30秒程度です。それを10回繰り返すとして、

何分かかるでしょうか。弾けないところをそのままにしてつっかえつっかえ2〜3回練習し、

当然、次の日も弾けない状態が続いては大人でもだんだんピアノの蓋を開けるのが億劫になってきます。

弾けないところを翌日に持ち越さないということが、ピアノ学習のモチベーション上とても大切なことです。

保護者様にはぜひ、長時間はご負担が大きいと思いますが、ご自宅でこの「部分練習の数分」だけ根気よく

付き合って差し上げてほしいと思います。1日に5分、10分だけなど時間を決めてもいいかもしれません。

その時に、出来ないことは指摘せず、出来た時に思いきり褒めて差し上げてください。

つかえていたところが弾けるようになれば、今度は保護者様なしでも1曲通した練習は自発的に、

自然とできるようになります。「できることは楽しい=自分で弾きたくなる」からです。

そこまでのほんの少しのバックアップを、最初の数年はぜひ保護者様にはお心に留め置いて、

一緒に乗り越えて差し上げてほしいと思います。

練習の方法・練習の効果が身をもって分かれば、小学校中学年以上になると自立した練習ができるようになります。

お稽古事ならではの、一つ一つの壁をクリアする小さな達成感は、お子様にとっても大きな自信につながります。

少し違うかもしれませんが、何回も練習を繰り返した末に「鉄棒の逆上がりが出来た時の達成感」に似ているかも

しれません。1曲の中には何箇所か越えるべき「逆上がり」の場所があります。それをクリア出来た時の達成感を、

その積み重ねを、ぜひお子様にご経験いただきたいと思います。それを保護者様が一緒に見守って乗り越えて

くだされば、お子様にとって百人力です。

長くなりましたがまとめます。

(1)時間を決めた短時間の部分練習を繰り返すこと

(2)一日一箇所でも弾けないところを翌日に持ち越さないこと

それをぜひお子様とご一緒に、ご自宅での練習の習慣にしていただければと思います。

短時間とはいえ、これはお子様一人ではなかなか難しいことです。

「部分練習」は最初はうまくいかなくても、必ず弾けなかったところが弾けるようになります。

それがクリアできれば曲を弾きこむ「練習」も自発的に、楽しく演奏できるようになります。