21
8月

THE PARTY vol.9


気候変動の8月末、また残暑が戻ってまいりました。

さて、まだまだ先と思っていましたが、約2ヶ月あまりとなったTHE PARTYシリーズのお知らせです。
今年は9回目、年に1度なので早9年目となります。
このシリーズを始めたきっかけは、ある方の助言によるものでした。

ピアノの演奏というのは(楽器全般、歌も含めて)、一般的な優雅なイメージとは少し違って、かなりの肉体労働です。
音楽家はアスリートといっても過言ではないと思います。気力・体力はもとより、筋肉勝負の部分が大きいので、いつまでも学生時代と同じようなつもりでいると、大間違いなのです。稀に、世界的なピアニストとして高齢になるまで現役の方もいらっしゃいますが、それは奇跡に近いこと。かのホロヴィッツですら、晩年のコンサートは賛否両論でした。
もっと平たく言うと、演奏活動を続けるということは、オリンピック選手が引退せずに50、60、70歳と現役を続けるようなものなのです。これはいかに不可能なことかお分かりいただけると思います。
それでも音楽は、年齢を重ねて初めて見える景色というものがあって、これは若い頃には決して見えない景色です。
続けていればこそ見える景色と言えるかもしれません。私も、本当に音楽が楽しいと思ったのは40代になってからでした。今はさらに見える景色が変わってまいりました。音、時間、空間、人との一期一会を痛感するからです。

実は10年ほど前に、筋力はもとより、自分の気力・体力のピークを過ぎ、人前で演奏することからは潔く引退しようと思っていました。でも、先述のある方が、「先生が演奏されている姿は、生徒さんたちにとって大きな刺激であり、目指す指針になるのですから、どうぞ引退するなんておっしゃらずに弾き続けてください。それはお教室を続ける限り、先生の義務だと思いますよ」と叱ってくださったのです。
そうだ!やめてしまうのは簡単、いつでもできること。でも、手指の動く限りは弾き続けようと背中を押していただく思いでした。もともと、人前で演奏することはどちらかというと苦手で、できることならそれを避けたい・・・でも数々の演奏の仕事をいただく中で、自分自身に鞭打ってやってきたようなところがありますが、なんと贅沢で傲慢な考えだったことかと反省しました。演奏できる手指がある、演奏できる場がある。自分からそれを捨ててしまうことのなんと愚かなことでしょう。
ピアノの名手でいらっしゃる美智子上皇后様が、ご自分の演奏技術が思い通りにならなくなった時に「天からお借りしたものをお返しする」という趣旨のことをおっしゃっていましたが、天からお借りしたものを、中途半端にはお返しできないな、というのが今の心境です。いよいよお返しする時が来るまで、細々ではありますが、続けてまいりたいと思います。

コロナ禍ではありますが、会場の方針のもと客席50%、また会場は開設時より4分間に1度、外気と換気されるという優れた換気機能がある場所です。
今年の演奏は今年限り。気を引き締めて臨んで参ります。また今回スペシャルゲストとして、元宝塚歌劇団のやまぐちあきこさんに、お力添えいただきます。素晴らしい歌声に大ファンとなって、今回のご出演をお願いいたしました。
ご多用と存じますが、御来聴賜れば幸甚に存じます。