15
2月

憧れの先輩・小澤征爾先生

 今月6日に、指揮者の小澤征爾先生がご他界されました。

小澤先生は母校の憧れの先輩でした。

もっとも、私はピアノ科の生徒だったので

よほどのことがないと接点がなかったのですが、

このサインは高校入学直後に、

同級生がたまたまどこかの喫茶店で小澤先生と遭遇した時に、

「桐朋の高校1年です!」と言って書いてもらったもの。

真魚ちゃんにももらってきたよ!とくれました。

小澤先生は「そう桐朋生なの、頑張ってね。」と

快くサインを書いて下さったそうです。

その後ちょうど大学進学した頃に、故・斎藤秀雄先生を偲んで

「サイトウキネンオーケストラ」が結成されました。

私たちが桐朋生だった頃は、もうすでに斉藤先生はご他界された後でしたが

先生のお部屋というのは校舎の中に残っていました。

鍵のかかったその部屋は覗き窓から見られるのですが、

なんだか博物館のような、時の止まった独特の部屋でした。

 斉藤先生の教え子は、小澤先生をはじめ桐朋の錚々たる先輩方で

オーケストラのリハーサルに、その先輩方が続々と

「333教室(試験の大教室)」に集まってみえた時は、

ふだんテレビの中でしか見たことのないような先輩方の熱気に圧倒されました。

この時、玄関ホールにある階段で小澤先生とすれ違いましたが、

こちらから挨拶する前にすれ違う学生みんなに「こんにちわ!」「こんにちわ!」と

ご挨拶してくださり、感激したものです。

弦楽器の中でもとりわけ優秀な同期生たちは、

卒業後もこのサイトウキネンのメンバーになって

小澤先生の元、それはそれはたくさんの貴重な音楽体験をしたようで、

羨ましいなとつくづく思います。

 学校のレッスンでは個人レッスンの他に、希望者は「二重奏ソナタ」といって

アンサンブルのレッスンも受けられました。

ピアノとヴァイオリン、ピアノとフルート、2台ピアノ、等々。

レッスンを受けたい先生を3人まで希望が出せるのですが、

みんなダメもとで「小澤征爾」などと書いたものです。

当時、海外と日本と行き来していらした小澤先生に見ていただけるわけもないのですが、

こんなダメもとも楽しい思い出です。

それでも、日本を代表する作曲家でいらっしゃる三善晃先生(当時学長)や

間宮芳生先生、室内楽の大家でいらっしゃる岩崎淑先生などに

二重奏のレッスンをみていただけたことは

その後の自分の演奏の中に宝物として残っています。

 今は母校も新校舎になってしまい、また悲願だったホールもできました。

新校舎を見に行ったとき、件の「333教室」も、

名前だけ残って大教室は「333」となっていました。

卒業生にとって「333」は特別な部屋です。

今の校舎では3階に33も部屋がないのですが名前だけでも残って、

なんだか嬉しく思いました。

あの趣のある校舎はもう心の中にしかありませんが、

母校・桐朋のよき伝統は受け継がれて行くことを願います。

そして自分も母校に恥じないようにと改めて身の引き締まる思いです。